はじめに
腓腹筋肥大(calf muscle hypertrophy)は、神経内科や小児神経、整形外科の診療で遭遇することがある重要な身体所見です。
多くの筋ジストロフィーでは筋萎縮が主症状ですが、**Duchenne型筋ジストロフィー(DMD)やBecker型筋ジストロフィー(BMD)**では、腓腹筋肥大が非常に特徴的な所見として知られています。
腓腹筋肥大とは
これまでは**偽性肥大(pseudohypertrophy)**と呼ばれることが多くありました。
病初期では肥大した筋は比較的硬く、CTでも脂肪置換はほとんど認められません。
しかし病気が進行すると筋は柔らかくなり、脂肪置換が進行して偽性肥大の所見を呈します。また、筋ジストロフィーのモデル動物では過剰再生がみられることから、現在では「偽性肥大」よりも腓腹筋肥大という表現が一般的になりつつあります。

図1.Duchenne型筋ジストロフィーにおける下腿筋の変化
病初期には腓腹筋・ヒラメ筋の肥大が目立ち、脂肪置換は比較的軽度です。進行すると脂肪置換が増加し、見かけ上の筋肥大に対して筋力は低下します。
腓腹筋肥大をきたす代表的疾患
腓腹筋肥大を認めた場合、まずDMD・BMDを考えますが、近年では一部の肢帯型筋ジストロフィーでも認められることが分かっています。
| 疾患 | 腓腹筋肥大 |
|---|---|
| Duchenne muscular dystrophy | ◎ |
| Becker muscular dystrophy | ◎ |
| LGMDR3-6(サルコグリカノパチー) | ○ |
| LGMDR9(FKRP関連) | ○ |
| LGMDR13(FKTN関連) | ○ |
| Caveolin-3欠損(LGMDR1C) | ○ |
| DMD/BMD症候性保因者 | △ |
※腓腹筋肥大の程度や頻度には、病型や症例による差があります。
肢帯型筋ジストロフィーでも腓腹筋肥大を認める
DMD・BMDのような特徴的な臨床像を示さないことも多く、四肢近位筋や腰帯部の筋力低下を主症状とします。一方、一部の病型では腓腹筋肥大がみられるため、鑑別として重要です。
まとめ
- 腓腹筋肥大はDMD・BMDで代表的にみられる身体所見である。
- 初期には筋再生による肥大、進行すると脂肪置換・線維化が加わる。
- DMD・BMD以外にも、サルコグリカノパチー、FKRP関連、FKTN関連、Caveolin-3関連などの肢帯型筋ジストロフィーでも認められる。
参考文献
- 埜中征哉,西野一三.臨床のための筋病理 第5版.日本医事新報社,2021.



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