SEP(体性感覚誘発電位)とは?伝導路・検査方法をわかりやすく解説

電気生理

SEP(somatosensory evoked potentials:体性感覚誘発電位)は、末梢神経を電気刺激し、その刺激が末梢神経・脊髄を通って大脳皮質まで伝わる過程で生じる電位を記録する検査です。

MRIでは神経系の「形」を評価できますが、SEPでは感覚伝導路が実際に機能しているかを電気生理学的に評価できます。そのため画像検査だけでは評価しにくい感覚伝導路の機能障害を捉えるのに役立ちます。現在でも臨床神経生理検査として確立された検査で、画像検査や神経伝導検査を補完する役割があります。

この記事では、

「どこを刺激して、どこを通って、どこで記録しているのか?」

を意識しながらSEPを整理していきます。

SEPでは何を見ている?

SEPを理解するうえで、まず押さえておきたいのが体性感覚の伝導路です。

基本的には、

末梢神経

脊髄後索(
下肢:薄束、上肢:楔状束)

延髄

内側毛帯

視床

大脳皮質感覚野

という経路をたどります。

脊髄後索では、下肢からの線維は主として薄束、上肢からの線維は楔状束を上行します。延髄の薄束核・楔状束核でニューロンを乗り換えた後に交叉し、内側毛帯を形成して視床へ向かいます。

そして視床から大脳皮質の一次体性感覚野へ投射します。


末梢神経→後索→延髄→内側毛帯→視床→大脳皮質の模式図

SEPの基本原理

SEPでは末梢神経を繰り返し電気刺激し、それによって生じる電気活動を身体の複数の場所から記録します。

ここで重要なのが、

電位は2つの電極間の電位差として記録される

ということです。

そのため、「どこに記録電極を置くか」だけではなく、**どことどこの電位差を記録するか=導出(montage)**が重要になります。

さらにSEPの電位は非常に小さいため、1回の刺激だけでは背景の脳波や筋電図などに埋もれてしまいます。

そこで同じ刺激を何度も繰り返し、

加算平均(averaging)

することで、刺激に同期して出現するSEPを抽出します。

上肢SEP:正中神経刺激

上肢SEPでは、一般的に手関節部で**正中神経(median nerve)**を刺激します。

刺激によって生じた電気活動は、

正中神経

腕神経叢

頸髄

脳幹

視床

大脳皮質

と伝わっていきます。

この途中で複数の場所から電位を記録することで、

「どこまでは正常に伝わっていて、どこから伝導が悪くなっているのか」

を考えることができます。SEPは単に「正常・異常」を判定するだけでなく、障害部位を推定できるところが重要です。

ここでは一例として、N20を記録する際の電極配置を示します。

下肢SEP:脛骨神経刺激

下肢では一般的に**脛骨神経(tibial nerve)**を刺激します。

刺激は、

脛骨神経

腰仙髄

脊髄後索

脳幹

視床

大脳皮質

へと伝わります。

下肢SEPでは上肢より伝導距離が長いため、皮質電位が出現するまでの潜時も長くなります。

ここでは一例として、P38を記録する際の電極配置を示します。

SEPをきれいに記録するコツ

SEPは数µV程度の非常に小さな電位を扱うため、アーチファクトの影響を受けやすい検査です。

<記録条件>

項目推奨設定ポイント
A 記録感度20 μV/div → 2 μV/div記録開始後に拡大
B フィルターHigh-cut:2 kHz  Low-cut:5 Hzハムフィルターは OFF
C 分析時間上肢:50 ms / 下肢:100 ms上肢 5 ms/div、下肢 10 ms/div
D Reject level1〜3 divで適宜調整Common Reject推奨
E 刺激頻度上肢:約5 Hz / 下肢:約3 Hz交流の倍数を避ける (例:4.9 Hz / 2.9 Hz)
F Continuous StimON刺激を止めずに2回目記録可能

<刺激・加算>

下肢刺激の強度は10~20 mA程度が目安です。母趾から中趾付近まで刺激に伴うしびれ感が生じる閾値を確認し、その約2倍を目安とします。

300回程度の加算を2セット行い、波形の再現性を確認します。

<声かけ・環境>

  • できるだけリラックスする
  • 筋肉に力を入れない
  • 歯を食いしばらない
  • 必要に応じて眠ってもらう
  • 部屋を暗くする

まとめ

SEP(体性感覚誘発電位)は、末梢神経を電気刺激し、その刺激が脊髄・脳幹を経由して大脳皮質へ伝わる過程を記録する検査です。

MRIが主に神経系の構造を評価するのに対し、SEPは感覚伝導路の機能を評価できることが特徴です。

まずは、

刺激する

末梢を通る

脊髄を上行する

脳まで届く

その途中で電位を記録する

というイメージを持っておくと、SEPはかなり理解しやすくなります。

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