筋炎の筋病理をどう見る?皮膚筋炎・抗合成酵素症候群・IMNM・封入体筋炎を整理

筋疾患

「筋炎」と聞くと、筋病理でリンパ球がたくさん浸潤しているイメージを持つかもしれません。

しかし実際には、疾患ごとに病態は異なり、筋病理所見にもそれぞれ特徴があります。

皮膚筋炎(Dermatomyositis:DM)

皮膚筋炎では、Ⅰ型インターフェロン(type I interferon)経路の活性化が病態に重要と考えられています。

筋病理では、このⅠ型インターフェロン経路の活性化を反映するマーカーとして**MxA(myxovirus resistance protein A)**が重要です。(感度71%、特異度98%)

参考:Sarcoplasmic MxA expression: A valuable marker of dermatomyositis

教科書的に有名なperifascicular atrophyは、感度47%、特異度98%

皮膚筋炎関連自己抗体

皮膚筋炎では筋炎特異的自己抗体によって臨床像が異なります。

自己抗体臨床的特徴
抗TIF1抗体悪性腫瘍との関連
抗NXP2抗体小児、石灰化
抗Mi-2抗体筋力低下
抗MDA5抗体筋症状が乏しいことがあり、間質性肺炎や逆Gottron徴候
抗SAE抗体高齢発症多い

抗合成酵素症候群(Antisynthetase syndrome:ASyS)

抗合成酵素症候群は、筋だけではなく肺・皮膚・関節などにも症状を呈する多臓器性自己免疫疾患です。

代表的な臨床症状として、

  • 筋炎
  • 間質性肺疾患
  • 皮膚症状(機械工の手など)
  • 関節炎
  • 発熱
  • Raynaud現象

などがあります。

筋病理では**perifascicular necrosis(筋束周辺部壊死)**が特徴的な所見として知られています。

ここで重要なのが皮膚筋炎との違いです。

皮膚筋炎ではⅠ型インターフェロン経路の活性化を反映してMxAが陽性となりますが、抗合成酵素症候群では基本的にMxAは陰性です。

したがって、

皮膚筋炎抗合成酵素症候群は、別病態であると考えられています。

免疫介在性壊死性ミオパチー(IMNM)

IMNMでは、その名前の通り筋線維の壊死・再生が主体となります。

一方で、リンパ球が非壊死筋線維を囲んだり、非壊死性線維内部へと侵入している像は通常目立ちません

代表的な筋炎特異的自己抗体として、

  • 抗SRP抗体
  • 抗HMGCR抗体

があります。

抗HMGCR抗体陽性IMNMと筋ジストロフィー

抗HMGCR抗体陽性IMNMは、HE染色だけを見ると筋ジストロフィーと非常によく似ることがあります。

参考:臨床神経学 2017;57:567–572

どちらも、

筋線維壊死 → 再生

という病理像を示すためです。

そこで鑑別に役立つのが免疫染色です。

抗HMGCR抗体陽性IMNMでは、

  • 非壊死筋線維へのHLA-ABC発現
  • 非壊死筋線維や毛細血管へのMAC沈着

などの炎症・免疫学的所見が鑑別の手がかりになります。

封入体筋炎(Inclusion body myositis:IBM)

封入体筋炎は、高齢者に多い炎症性筋疾患です。

筋病理では、

・非壊死筋線維を取り囲み、筋線維内部へ侵入するリンパ球浸潤

  • 縁取り空胞(rimmed vacuoles)
  • p62陽性凝集体
  • TDP-43陽性凝集体

などが重要な所見です。

p62やTDP-43などのタンパク質凝集は、細胞内のタンパク質分解・処理機構の異常を反映していると考えられます。

臨床的には大腿四頭筋や手指屈筋の筋力低下が特徴的で、筋病理と臨床像を組み合わせて診断します。

DIPだけ罹患している時は握力下がらないこともあり、注意が必要です。

※多発筋炎(Polymyositis:PM)

古典的な多発筋炎の筋病理では、

  • 非壊死筋線維をリンパ球が取り囲む
  • 非壊死筋線維内部へのリンパ球浸潤

などが特徴とされます。

ただし現在では、従来、多発筋炎と診断されていた症例には、かなりの割合で封入体筋炎が含まれていると考えられています。

まとめ

疾患覚える病理所見
DMperifascicular atrophy、MxA陽性
ASySperifascicular necrosis、MxA基本陰性
IMNM筋線維の壊死・再生が主体
IBM非壊死筋線維へのリンパ球侵入+rimmed vacuoles+蛋白凝集

参考文献

  1. Uruha A, Nishikawa A, Tsuburaya RS, et al. Sarcoplasmic MxA expression: A valuable marker of dermatomyositis. Neurology. 2017;88(5):493-500.
  2. Liang WC, Uruha A, Suzuki S, et al. Pediatric necrotizing myopathy associated with anti-3-hydroxy-3-methylglutaryl-coenzyme A reductase antibodies. Rheumatology (Oxford). 2017;56(2):287-293.
  3. Suzuki S, Nishikawa A, Kuwana M, et al. Inflammatory myopathy with anti-signal recognition particle antibodies: case series of 100 patients. Orphanet J Rare Dis. 2015;10:61.
  4. 筋ジストロフィーとの鑑別を要した,慢性経過の小児期発症抗HMGCR抗体陽性壊死性ミオパチーの1例. 臨床神経学. 2017;57(10):567-572.
  5. Tanboon J, Nishino I. Classification of idiopathic inflammatory myopathies: pathology perspectives. Curr Opin Neurol. 2019;32(5):704-714.
  6. 第75回 筋病理セミナー 講義資料. 国立精神・神経医療研究センター.

コメント

タイトルとURLをコピーしました